◆上司のセクハラ、会社にも賠償責任(判例から考える)


 【セクハラ損害賠償等請求事件(東京地裁 平成28年12月21日)】

上司Aは、退社する際に部下の女性従業員の頭部に触れたことが
複数回あった。また、「愛してる」などとメールを送信したうえ、
部下がはぐらかせるような応答をしたことに対し、
「もう、いい」などというメールを送信し、部下を不安・困惑に陥れた。

これらの行為は、以後の就業環境を不快にする言動であり、セクハラ行為に
あたると判断できることから、Aは不法行為責任を負うこととなった。

また、新入社員を対象としたセクハラ防止研修は実施していたが、
上司Aのような中途採用者を対象とした研修を実施していなかったことから、
会社に対しても、指導・教育義務を怠っていたとして賠償責任があるとされた。

上司Aと会社の賠償金額は10万円である。

     【セクハラ損害賠償等請求事件(東京地裁 平成28年12月21日)】

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企業・組織には、従業員に対してセクハラに関する理解を深めるための
教育・研修を実施する義務があります。

上記の判例に登場した会社では新入社員に対する研修は実施していましたが、
中途採用者に対しては実施していなかったことが、問題となりました。

ハラスメントに関する研修は、新卒者、中途採用者などの新規採用者だけでなく、
全従業員を対象として、定期的に、繰り返し実施することが重要です。

単に研修を実施するだけなく、受講者に対して、受講証明用の書類への
サインを義務付けたり、出席簿に自筆で「〇」を記入させたりすることで、
研修内容の定着やハラスメント防止に対する意識付けが期待できる場合も
あります。


皆様の組織のハラスメント研修は、定期的に繰り返し、
すべての従業員に漏れがないように設計されているでしょうか?
職能別・階層別など、組織の実態にあった研修内容になっていますか?

現在実施している研修の見直しや、より効果的な研修導入のための
ご相談はいつでも、承っております。ぜひ、お声がけください。
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2016年ハラスメントのトピックスを振り返る

今年も、ハラスメントにまつわる話題がたくさんありました。
過労がきっかけの自殺といった、目を覆いたくなるような出来事が、
再発することのないように、2016年を振り返ってみたいと思います。

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【職場のハラスメント、労働局の窓口一つに】

今年4月、厚生労働省は都道府県労働局に職場のハラスメントの相談や
紛争解決に一元的にあたる新部署を設置しました。

ハラスメント(嫌がらせ)の内容によって異なっていた窓口を一本化し、
被害者が相談しやすくするとともに、働きやすい職場づくりに向けた
企業への指導や啓発を強化することが目的です。

このような体制が整ったことにより、ハラスメントが発生した企業に対する
労働局の指導は厳しいものになったと感じています。

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【セクハラ被害、働く女性の3割が経験】

3月に発表された厚生労働省が行った実態調査によると、
「働く女性の3割がセクハラを経験したことがある」と考えていることが
わかりました。

容姿や年齢を話題にされた事例が多く、
被害者の半数以上は被害を訴えずに事実上泣き寝入りをしています。

また、妊娠や出産を理由に不利益を被る「マタハラ」を経験した女性は
2割を超えていました。

以前に比べ、セクハラ、マタハラへの認知が進んでいるにも関わらず、
依然多くの被害が起きています。被害をなくすためには、
被害者が相談しやすい体制づくりが大切だと考えます。

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【セクハラ指針に「LGBTも対象」と明記される】

厚生労働省が示す「セクハラ指針」が改正され、
職場での性的少数者(LGBT)への差別的な言動がセクハラとなることが、
明確化されました。

性的少数者は、1割程度ともいわれています。
ハラスメント対策にかかわる皆さまには、ぜひ、
LGBTは身近な問題のひとつだと捉えていただきたいと考えています。

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【労働相談が4年ぶり増加 パワハラは4年連続最多】

厚生労働省の発表によると、2015年度のパワハラに関する相談が6万6566件。
前年比7.0%増で、4年連続の最多となりました。

相談数が増えた背景としては、パワハラという言葉が
企業や労働者の間で浸透し、相談しやすくなったことが指摘されています。

6万件以上の相談の影に、相談できずにいる人も相当数いるはずです。
引き続き、積極的に啓発活動をしていくことが大事だと考えます。

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【マタハラで懲戒 就業規則に明記】

改正男女雇用機会均等法が成立し、来年1月から企業のマタハラ対策が
義務化されました。

マタハラの典型例として、
(1)妊娠した女性社員に上司が解雇などを示唆
(2)社員が妊娠、出産に関する社内制度の利用を相談したところ、
   上司が利用しないよう求めた
(3)制度を利用した社員に対し、業務に従事させないなど嫌がらせをした
などを示しています。

被害は後を絶たず、企業に厳格な対応を促すことが目的。
加害者は懲戒処分の対象となることを就業規則に明記することが
求められています。

いよいよ、来年からマタハラへの対策が義務化されます。
2017年は、マタハラ対策元年となるでしょう。

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【電通の新入社員の過労による自殺】

広告代理店・電通の新入社員が昨年末に過労自殺した問題。
電通では、1991年にも同様のことが起こっており、
最悪のパターンが繰り返されてしまいました。

今回の事件は、過労が原因の労災という観点から語られがちですが、
パワハラやセクハラともとれる発言が上司からあったともいわれています。

電通だけでなく、今年は、労働者の自殺に対し、
パワハラなどの存在を認め、企業責任を認める判決が相次ぎました。

同じようなことを自社で起こさないために、何をしたらよいのか、
皆様も、自分の職場を振り返る機会になれば幸いです。

パワハラ相談件数、過去最多

厚生労働省は、労働者と企業のトラブルを裁判に持ち込まず
迅速に解決する「個別労働紛争解決制度」に基づく労働相談が、
2015年度、4年ぶりに増加したと発表(24万5125件:前年度比2.6%増)。

このうち、パワーハラスメントにあたる「いじめ・嫌がらせ」の相談が
6万6566件(同7.0%増)と最も多かった。

厚労省は「パワハラという言葉が企業や労働者の間で浸透し、
相談しやすくなったのではないか。引き続き企業に啓発していく」
としている。

「いじめ・嫌がらせ」の具体例としては、
先輩社員から毎日「のろい」「やめたら」などの侮辱的な発言を受け、
上司に訴えたが対応してくれなかったケースなどがあった。

次いで多かったのは「解雇」(3万7787件、3.0%減)。
「自己都合退職」(3万7648件、8.7%増)。

利用者の内訳は正社員が9万2624人と最多。
パート・アルバイトは3万9841人、期間契約社員は2万5732人。

                (日本経済新聞 2016年6月9日より抜粋)
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ハラスメントにまつわるお悩みをお聞きしていると、
何かあった時に、仲裁に入る人が職場に少なくなってきているように
感じることが増えました。

また、職場の雰囲気が殺伐としていたり、自分中心的な考え方をする人が
増えてきたりしているようにも感じます。
みなさんの職場は、いかがでしょうか?

上司からだけでなく、身近な先輩からパワハラを受けたというご相談も
増えています。改めて、
 ・「同じ職場で働く仲間である」という意識を醸成すること
 ・相手を尊重すること
が大事だと感じています。

ぜひ、これらのメッセージを、トップダウンで明確に発信するだけでなく、
地道ではありますが、日々の業務の中で上司がことあるごとに伝えたり、
人事担当者が各事業所をまわって伝えたりしていってください。

パワハラという言葉に過剰反応して、「甘くなる・ゆるくする」のではなく、
「自社は何を目指しているのか」を明確に伝えていくことが、
ハラスメント防止の第一歩なのだと思います。

厚労省が明文化 「LGBT」もセクハラ対応の対象に

 厚生労働省は、5月25日の審議会で、企業には
 「性的少数者へのセクシュアルハラスメントにも対応する義務がある」
 ということを明確にするため、男女雇用機会均等法によって定められている
 指針の改訂案を示した。

 この指針は、企業に対してセクハラへの対処方針を就業規則に定めたり、
 相談窓口を設置したりすることを義務づけている。
 今回、対象のセクハラが「被害者の性的指向や性自認にかかわらない」と
 新たに明記する方針だ。

 今でも企業には対応する義務があるが、明文化して周知をはかる。

 厚労省によると、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、
 トランスジェンダー)ら性的少数者へのセクハラについて、
 性的少数者が相談窓口に行っても取り合ってもらえない例があるという。

 本改正案は、来年1月から適用される見通し。

                (朝日新聞 2016年5月25日より抜粋)
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職場には、LGBTだけでなく、たとえば病気を抱えているなど、
いろいろな事情を抱えている人がいます。

その事情を抱えていることに対して、
「あの人は違うから」と判断をして、排除をしたり、
特別な配慮をしすぎるのではなく、一人ひとりが各人がもつ力を発揮できる、
多様性を尊重した職場づくりを目指したいものです。

そのような観点から考えると、
【「人材の均質化」はハラスメントの温床につながる】のではないか、
ということを強く実感しています。

たらい回し防止。ハラスメント相談、労働局の窓口が一本化へ

このたびの平成28年熊本地震により、亡くなられ
た方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された
方々に対し、心よりお見舞い申し上げます。
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厚生労働省は4月から、都道府県労働局に、職場
のハラスメントの相談や紛争解決に一元的にあたる
新部署を設置することになりました。
ハラスメント(嫌がらせ)の内容により異なっていた
窓口を一本化するのが狙い。被害者が相談しやす
くするとともに、働きやすい職場づくりに向けた企業
への指導や啓発も強化されます。
これまでは、セクハラとマタハラは都道府県にある
労働局の「雇用均等室」が、パワハラは「総務部」や
「労働基準部」が対応していました。そのため、
セクハラやパワハラを同時に受ける複合的被害の
場合に、被害者が窓口をたらい回しにされるケースや、
同じ企業への指導や勧告を異なる部署が行うケースも
ありました。
4月からは、嫌がらせ被害への対応業務は、新部署の
「雇用環境・均等部(室)」に集約し、被害相談から
申し立てによる調停・あっせんまで一体的に行います。
人員も増強し、企業への指導や啓発を専門的に実施する
「雇用環境改善・均等推進指導官」を計271人配置する
ことになりました。
【日本経済新聞(2016年2月29日)より編集】

嫌がらせ被害に対応する行政の窓口が一本化される
ことで、より一層、企業・組織には防止意識が必要です。
未然の防止策や相談体制が整っているか、
自社の体制をこの機会に見直してはいかがでしょうか。
プロフィール

ヒューマンクオリティー

Author:ヒューマンクオリティー
樋口ユミ
(株)ヒューマン・クオリティー代表取締役

ハラスメント防止対策の専門機関としてあらゆる企業・団体・教育機関に対して防止対策コンサルティングや教育研修、カウンセリングを行う。
産業カウンセラー・米国GCDF-
Japanキャリアカウンセラー

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